● 彼女のかけら(4/4) ●

次の日、宿の下の酒場で待っていると、ヴィトスさんがやって来た。
「街はずれの橋の上で、初めてユーディーと会ったんです」
話しをしながら、橋の方まで歩いて行く。
「私、橋の手すりの上で、妖精さんに会えるようにってお祈りしてて、そうしたらユーディーが
 木の上から落っこちて来て」
橋の手すりに手をかけると
「危ないよ」
ヴィトスさんが止めようとしたけど、私はそのまま登ってしまった。

「ここで、『妖精さん、妖精さん』って……あら?」
その時、後ろの茂みの方で、急にがさっ、と大きな音がした。驚いて振り向いたら手すりから
落ちそうになって、ヴィトスさんにささえてもらった。手すりから降りて茂みの方を見ていると、
「にゃーん」
黒い、大きなネコがゆったりと歩いて来た。
「あ、このネコ」
「ユーディットが、よくヒゲをむしってたネコだね」
ヴィトスさんが口元に手を当て、笑いをこらえている。

「ネコ、ネコさん。今日はヒゲ切られなくて、良かったねえ?」
私が手を差し出すと、ネコはくるっ、と後ろを向いて逃げていってしまった。
「私、ひどい事しないのに、逃げちゃったわ」
「ユーディットの仲間だと思われたのかねえ」
また、二人でくすくす、と笑ってしまう。

中央広場へ戻ると、目の覚めるような青いドレスのヘルミーナさんに会った。
「あら、珍しい二人が歩いているのね」
「ユーディーと一緒に来た場所を回るのに、ヴィトスさんに護衛してもらってるんです。彼女の
 事を忘れないように、って」
ヴィトスさんと小さく目配せをする。
「へえ。まあ、あの子はとっても印象深い子だから、忘れようったって、忘れられるはず無い
 と思うけどね」

少し冷たいような口調のヘルミーナさん。でも、ユーディーが帰る日に、一緒にあの場所にいて、
ユーディーがいなくなった後、目元をちょっと押さえてたのを知ってる。
「それに、会いたいと思ってれば、いつかまた会えるわよ、多分ね。錬金術をやってる限り、
 どんな可能性でもあるんだから」
「やっぱり、ヘルミーナさんもそう思いますよね!」
ユーディーと同じ錬金術師さんの口からその言葉を聞いて、嬉しくなった私は思わずヘルミーナさんの
両手を握ってしまった。

「な、なによ……」
「あ、すみません。ところで、これからメッテルブルグへ行くんですが、ヘルミーナさんにも
 護衛をお願いしていいですか?」
「別にいいけど」
「やったあ!」
喜ぶ私を見て、
「あなた、ユーディットに似てるわね」
ヘルミーナさんが、くすっ、と笑った。

三人で、ヴェルンの街を出る。
「今度、僕がユーディットと初めて会った場所に、行ってみないか」
ぽつり、とヴィトスさんがつぶやいた。
「あばら屋が一つあるきりで、他は何にも無いけどね」
「行ってみたいです!」
そう言えば、自分の家が廃墟になってた、ってユーディーの話しは聞いた事があるけど、そこに
行ってみた事は無かったな。

「その時は、私もご一緒してもいいわよ」
「じゃあ、みんなも誘って行きましょう。お弁当を持って……」
ヘルミーナさんと私が盛り上がっていると、ヴィトスさんが
「おいおい、観光できるような場所じゃないぞ。オオカミだって出るし」
やれやれ、と言った風に首をふる。
「平気ですよ、みんながいれば。ね、ヘルミーナさん」
「そうね。オオカミが出たら、あなたを餌にして逃げればいいものね」
ヘルミーナさんがヴィトスさんの方を見て笑うと、
「ひどいなあ」
ヴィトスさんも苦笑した。


メッテルブルグへの道を辿る。今度はちゃんと、ユーディーの思い出を集めながら。
私はもう大丈夫。
だって、ずっとユーディーの事が大好きだもの。
 ユーディーが帰っちゃうの、すっごくさみしいから、やなんだよう(泣)。
 ヴィトス、何にも言わないしね!!
 エンディングムービーも、なんかみんな別れ別れになっちゃうような感じだし。

 個人的には、ユーディーが帰るエンディングは、きっとヴィトスに振られたからだ、
 と思っているんですが。←多分違うぞ

 ヴィトスはユーディー一途だったと言う事で。
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